萩沢写真館/「街を歩く」

Hagisawa Photo Gallery with Machi wo Aruku

星への願い  

ニラの花咲く10月

category: 写真(篠有里)

thread: ある日の風景や景色 - janre: 写真

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Symptom 201670217(№75)(お萩)  

再々掲Symptom75番


文章5


 有線放送のBGMがニュース番組の音声と重なり、奇妙な不協和音を生み出していた。それは、そこで診察を待つ患者と、彼らの付き添いや医者、受付の事務員らとの「それ以上歩み寄ることのできない境界」が接して起こる“きしみ”の様に聞こえた。


 眠気は突然やってくる。常にぼんやりした頭の中でいつ訪れるかわからない睡魔と、気だるい闘いをしていた。俺は眠るために薬を飲み、目を覚ますために薬を飲んだ。そして今日もまた、現実の理によって自発的に生じたのか、それとも脳内にばら撒かれた化学物質が引き起こしているのか分からない眠りに身を任せる。


 診察室の前の廊下の長いすに腰をかけて呼ばれるのを待ちながら、ぼんやりと廊下の向かい側の壁を眺める。壁のタイルの一部が、まわりのタイルから浮き出す。ぼこり。ぼこり。ぼこり。それはセル・オートマトンによるライフゲームを連想させた。


 ルールは簡単。

 1)セル(タイル)を囲む4方向のセルがオン(浮き出ている)ならば、

   その囲まれたセルはオン(浮き出る)になる。

 2)それ以外はもとのまま。


 浮き出るタイルと沈むタイルの展開する虫食いゲームを眺めていると、診察室から不意に名前を呼ばれる。タイルの作った奇怪な幾何学的模様は将棋板の駒がかき混ぜられるようにふっとその形を失い、病院の壁に姿を戻した。


 ルールは簡単。

 1)俺は眠っているのだろうかと思うときは、そう思う俺は実際に眠っている。

 2)それ以外は起きている。起きている限り俺は現実では夢を見ない。

   そしてそれは眠りの中でも同様。
 

 俺は病棟の壁でいつ終わるとも知れないライフゲームを永遠に繰り返す。 

category: 写真+テキスト(お萩)

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Symptom 20170209(№74)(お萩)  

再々掲Symptom74番


まったく何の役に立つのかわからない毎日をただただ繰り返している。昨日と同じ今日。今日とおそらく大した違いのない明日。ただただ週末の休みが来るのを待ちながら平日をやり過ごす。


休日がほしい、と思う。


しかし休日は「エンジョイすべき」なのか。休日は文字通り「休むべき」なのか。「エンジョイする」と疲れてしまい、次の週の平日をやり過ごすのがしんどい。「休む」とせっかくの自由な時間をただぼんやりと何もせずにサボってしまったことに罪悪感を感じる。


結局私は「休日の正しい過ごし方」を知らないのだ。


休日が来るたび「正しく休日を過ごせるかどうか」、不安で不安でどしようもなくなる。そして私は結局、一歩も動けない。


また明日から無味乾燥な平日が始まる。私はもはや月火水木金という記号でしかない平日を再び繰り返す。休日がほしい、と思いながら。

category: 写真+テキスト(お萩)

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うれしい目玉焼き  

ランチ弁当400円

category: 写真(篠有里)

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Symptom 20160130(№71)(お萩)  

再々掲Symptom71番


そもそも一人で住んでいるのに、ものがなくなるわけがない。しかし見つからないのだ。よりによってそれはツメキリ。ツメのさきっちょの白い部分は悪である、というのが俺の思想体系の中核をなしているわけだが、そんなめんどくさい哲学を背負っているおかげで俺はとにかく頻繁にツメを切る。しかし、ないのだ、ツメキリが。


ダイニング兼書斎兼リビング兼男の隠れ場の、まぁ簡単にいうと居間のテーブルの上に、ない。大切なものはまとめて保管しておくようにと、海軍出身のおやじの言いつけを守り、通帳やら財布やら車の鍵やら腕時計やらはかろうじて床の上ではなくテーブルの上に散乱しているのだが、肝心のツメキリが、ない。財布や通帳は無事なので盗難というわけではないだろう。しかし、一人で住んでいて使う人間はまさに自分自身のみなのに、ないのだ。


ホワイ?オーケーオーケー、まぁいいさ。なぁ、よく考えてみろよ。オマエはもう、30も過ぎたいい大人だ。今日はもう、そんなツメキリなんてちっぽけなもののことなんて忘れてぐっすりと眠り、明日、職場に行って同僚にいつもどおり明るく挨拶を交わしてから医務室へ行き、そこで備え付けを借り、気が済むまで、もうフカヅメするまでツメキリを堪能すればいいじゃないか。なぁ、そうだろ、ちょっとナーバスになってただけさ。オマエはスーパークールだ。と、鏡に映った自分を見つめながら先日感情をコントロールするセミナーで習った自己暗示を試してみたが、忘れよう忘れようとすればするほど親指のはじっこの、ツメがちょっと、カーブしている部分の白いところがもう、気になって気になってしょうがない。


いや、ちょっとまてよ。男の身だしなみキットは確か、洗面所にまとめておいてあったはず。きっとツメキリもそこにあるに違いない。物は分類して保管しろ、これも海兵だったおやじの教えだ。俺も海軍に入ればよかった(うそ)。洗面所にはミミカキとケヌキとハナゲシザーズが、有事に備え整然と蛍光灯の明かりを反射させていた。冷静な質感のメタルボディが、確かにコイツらならいついかなる非常の事態に陥っても適切に俺の期待に答えてくれるだろうと確信させた。


しかし問題はツメキリだよ。ツメキリはやはり、ない。ツメなんて最終的にはかじっちゃえばいいんだけど、うまくかじらないとまた別なところが気になるでっぱりになっちゃったりするんだよう。俺は、精神安定剤をいつもの倍、服用し、さらに併用を禁止されているアルコールをあおって意識を強制終了し、ベッドにもぐった。


翌日、仕事が明けるとまっすぐにデパートへ向かった。男の隠れ家に相応しいツメキリを物色するためだ。紛失したツメキリというのも実は、宿泊の出張中にどうしても足の親指のはじっこのカーブしている部分が気になって、またそれがベッド上でポジションをかえるたびにシーツに引っかかってムキー!となるので、コンビニに駆け込んで買った、不細工ないかにもコンビニ然したツメキリだったのだ。せっかく新しいのを買うのだ。やはりブランデーを傾けて一日の疲れを癒しながら、悠然とツメをグルーミングする、そんな大人の時間を満足させてくれるタイプのものが、今の俺には相応しい。BGMはラウンド・ミッドナイト。マイルスクインテット。


先日、そのダイニングの仕事机兼食事机に常備しているボックスティシューがなくなったので、新しいものと交換した。最近の箱ティッシュはつぶしやすくできてるからベンリやね、とか思ってカラになったほうのテッシュボックスを取り上げると、不相応に、重い。空のテッシュ箱というか、中にテッシュが詰まっていてもありえない質感の重さだ。不思議に思い、側面のタタミジョーズをべこりと押して箱を傾けると、失踪していたコンビニツメキリが中からいきおいよく滑り落ち、足の甲に直撃した。

category: 写真+テキスト(お萩)

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