萩沢写真館/「街を歩く」

Hagisawa Photo Gallery with Machi wo Aruku

Symptom 20170103(№63)(お萩)  

再々掲Symptom63番


異常潔癖症の俺は大学のとき食堂の米飯が食えなかった。だから注文するものはいつも麺類だった。潔癖症の人間にとって、麺類と丼類にいったい何の違いがあるのかという話は今回の主題ではないのでひとまず置いておく。食堂の麺類というと、そば・うどん・ラーメンなわけだが、若いときの俺はそばはあの独特なにおいが苦手だった。「そばくさい」のだ。ちなみにこの、「名詞+動詞(もしかすると形容動詞ですか?)」で「形容(動詞)詞」を作る方法は普段よく使われる。「塩からい」とか「サカナくさい」とか。この言語使用を過剰に拡大して使っている人がいた。「うわー、これ『レモンすっぱいー!』。」これが許されるのなら「ワサビからい」もありなのか、とその場で本人に問い詰めたところ、即答で「あり」だった。閑話休題。ラーメンは特に嫌いではなかったのだが、食べると必ず腹を壊して午後の授業に差し支えた。したがって、食堂で俺が食う飯はうどんであった。それも肉うどん。ネギは嫌いなので入れないように毎回頼んだのだが、昼時の注文が殺到しているとき、おばちゃんは時々俺の頼みを叶える暇がないときがあった。どう考えても「入れる」ほうが「入れない」よりも手間がかかるのに、なぜにおばちゃんはネギを入れてしまうのだろうか。その話は今回の主題ではないのでとりあえず置いておく。


さて、いつもは「肉うどん」を頼む俺だったが、ときには「月見うどん」を頼んだり、「けつねうろん」を頼んだり、「ワカメ酒」頼んだりすることもあった。下ネタでごめん。そのうどんのレパートリーの中で、いつも不思議に思うメニューがあった。たいていのうどんは「~うどん」というように「うどん」の具が形容詞的に冠してあり、想像の範囲の「具」が「うどん」に入っているのだろうということは容易に推測できた。あ、そうでもないな。「月見」とか「けつね」はなにが入っているかわかりにくいよね。こうやって考えると意外とうどんの名前は雅ですな。まぁその辺も今回の話の主題ではないので端折る。


で、ようするに一種類だけ、何が入っているのかわからないうどんのメニューがあった。俺は当時からガチガチの保守派で知られる男で、「新発売の梅マヨネーズ味チップス買って来たよ~」などとすぐに新製品に手を出し、しかもたいてい手痛い目(この場合は、不味いということ)にあう軽率な母親をひどく憎んでいたのだったが、簡単にいうと、よく知らないものに手をだいして後悔するよりは、新鮮味がなくてもだいたいなんとなくなぁなぁでわかるものを選ぶタイプなのです。


しかしある日、授業が突然休講になり、次の時間まで中途半端な感じで時間が空いてしまい、しょうがないので食堂で友人と消費税の導入についての利点と不利益についてそれぞれ100個ずつブレーンストーミングをしていた。そのときふと、今まさにあのメニューを試してみたらいいんじゃないか、だって消費税が導入されたらちょっと値上がりしちゃうじゃん、という思考のブレークスルーが起こった。俺はすっくと立ち上がりルーチン化された食券購入のタスクにパラダイムシフトを引き起こしそのメニューの食券を購入った。調理場のおばちゃんに手渡し、待つこと数分。そこに現れたのは、うどん、だった。ただの、うどん、だった。俺は社会構造の変化によってやむなくブルーカラー的作業に従事している自分にはなんら罪のないおばさんに、できるかぎり不快感を与えないように聞いた。「あの、マダム?これ、一見うどん以外に何も入ってないんですけど、もしかするとちょっとした手違いで具を配置するのをうっかりわすれてしまった、そんなことってお互い人間だから起こり得ることですよね?」おばちゃんは食券を再度、見た。そして別に間違いはない、という顔をしてこちらを見返した。「単刀直入にいいますと、『かけ』はいったいこのうどんのどこに入ってらっしゃるんでしょうか」何をいってるんだという顔をするおばちゃん。「つまり僕の頼んだのはただのうどんじゃなくて『かけうどん』なんですが。」「だから、汁がかかってるじゃない。」「‥。」ビーと自動食器洗い機の音が沈黙を破る。おばちゃんは初めから我々のコミュニケーションなどそこにはまるで存在していなかったかのように、実に無機的にその無機的な食器洗い機の方へ移動した。


この話を先日、ラーメンを食いながらガールフレンドに話したら、彼女もうどんにまつわるある数奇な体験をしていた。今年の春に大学生になった彼女の妹がバイトをすることになったらしい。奇しくも?うどん屋だ。真面目な彼女の妹は、家で姉であるガールフレンドを相手にうどん屋で注文をとるシミュレーションを(突然かつムリヤリ)始めた。「いらっしゃいませ。何名様ですか?はい、こちらへどうぞ。このお席でよろしいですか?えー注文を繰り返させていただきます(ガールフレンドには注文の選択権はなかった)。『すうどん』ですね。少々お待ちください。」「あのー、すいません。この『すうどん』って、どんなうどんなんですか?」「うどんに味付けとしてお酢が少々入っております。」

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終わりチューリップ  

終わりチューリップ

category: 写真(篠有里)

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やわらかにふりつもる  

M公園花びら敷き詰め

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魚卵天国  

G市場魚屋

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一昨年の春(2)  

黄色と赤のチューリップ

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Symptom 201612230(№62)(お萩)  

再々掲Symptom62番


3秒で答えて下さい。あなたのお宅の便座はO型ですか?U型ですか?いち、にい、さん‥、ビー。残念。じゃあ、ね、今度はもうちょっと時間をあげます。だからよおっく考えてみて下さい、あなたのお宅の、あなたが毎日使用しているその個室にある、便座のことを。どんな形だったか?どこのメーカーだったか?そもそも便座があったかどうか?いかがでしょう。ちなみにごく私的で恐縮ですが、拙宅の便座はイナックスのO型、です。洋式ですので、当然のごとく便座は存在します(ときどき寝ぼてソレが下がってるのを確認し忘れちゃって、便槽にガボ!なんてこともありますけどね。あ、申し訳ありません。余計な話でしたね。)なにゆえお前は自宅の便座についてそんな正確に、自信を持って答えられるのか。あなたはそう思っている。図星でしょう?もしくはこいつはさっきから便座、便座ってナニいってんだ、少しどうかしてんじゃねぇか?と思っている。完全に後者の方は貴重なお時間、本当にありがとうございました。私の話は以上です。前者、もしくは少々後者も混ざって入るが前者、という方々には、なぜ私が拙宅の便座についてこれほどの知見を持ちあわせているのか、それをこれからお話いたします。


そもそも私はカバーというカバー全てが嫌いです。あまりにも巷にはカバーが氾濫しすぎている。嘆かわしいことです。ドアノブカバー。ティッシュボックスカバー。電話機カバー、最近は見かけなくましたけどね。ケータイが普及したからでしょうかね。しかしケータイにもそれを2回りくらい大きくしてしまう、つまりケータイの「携帯性」を大いに損ねるほどの巨大なケータイカバーをつけてしまうカバー、というのもありますね。まぁ「全てのカバーが」というのは言い過ぎかもしれません。どうしても必要なカバーも確かにあるでしょう。僕のコンピュータはモバイルなので、どうしてもショック緩衝材としてカバーが必要です。しかし、し・か・し、しかーし、この間見たぞー俺は見た。家庭用ノートパソコンカバー(「大事なパソコンをほこりや日焼けから守りましょう」)を。使わねぇんだったらディスプレイを閉じろよっ、日に当たるなら別な場所に移動しろよっ、実際にそれを目の当たりにしたとき、もうあたりまえなんだけどそんな突っ込みをせずにはいられませんでした。


俺はその、TOTO・イナックス・ナショナル・日立の4社対応O型便座用カバーの包装を、水道からお湯が出てくるのを待つ間、何の気なしにはがした。そして歯ブラシに歯磨き粉をつけ、そのカバーを持ってトイレに行き、ちょっと磨いてはカバーのホックを止める、ホックをちょっと止めては、また磨く、間違ったホックをはずして正しいホックと合わせては、磨く。そんな具合で便座カバーの取り付けが終了した頃には、大方歯も磨きあがっていた。効率的だ。超便座法とでも名づけて野口教授にアイデアを提供したいくらいだ。口をゆすいで再びトイレへ。小用をしてから寝よう、と思ったのだ。寝る前の小用は大事だ。ガチャリ。トイレのドアを開ける。と、そこにはパステルカラーのカバーを誇らしげにまとった便座が私ににっこり微笑みかけていた。それはまるでトイレ個室全体が以前よりも華やかに感じたくらいのものだった。そして、「どうぞ、いいんですよ、さあ」と私を誘う。私はほんの少し小用を足したかっただけだった。それもいかにも男性的にしゃんと背筋を伸ばし、今日発散し切れなかった本能的攻撃性の残りを小水と一緒に便槽に叩きつけ、できるだけリビドーの少ない心安らかな状態で眠れるようにと、思いながら。しかし、実際は、そのフカフカしたブルーのパステルカラーのカバーをまとった便座さん(思わず敬称をつけてしまわんばかりだったのだ)の座りごこちがいかがなものか実証したいという誘惑に打ち勝つことはできなかった。「今のところお前に用はねぇんだよっ」とばかりにそのカバーのかかった便座を跳ね上げるだけの甲斐性が私にはなかったのだ。スリッパを履き、そっと腰を下ろす。暖房便座の温かみが、便座カバーの素材を通してやさしく滑らかに温かさを伝えてくる。飯は多く、そして速く。風呂の湯はたっぷり、そして熱く。そんな男根的観念に取り付かれたところのある俺は、以前のプラスチック剥き出しの便座の伝えてくる率直な暖房、一瞬、それが冷感なのか熱感なのか戸惑ってしまうその実直な働きぶりに一目置いており、さらに前出したようにカバーに対しては排斥主義の立場をとる俺ではあったが、そのホカホカ感(そういった表現が許されれば、だが)に即、魅了されてしまったことをここに屈辱を味わいつつも告白する。それは、座って小用をするという、日本人の男性にとっては恥辱とすらいえる行為も許される、そんな空間だったのだ。


ここちよい眠気を伴いながら用を済まし、腰を上げ、ズボンをはく。そして俺は、そのカバーのかかった便座をゆっくりと一周撫で、その感触を手のひらに残しながら満足げにトイレを後にした。


余談だがうちにはこの現在使用中のものを含めて3つの便座カバーがある。別に気分に合わせて今日はこれと選んだり、一つを洗濯している時に予備として使うためのものではない。


残りの2つはU型対応なのだ。

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Symptom 20161225(№61)(お萩)  

再々掲Symptom61番


「清水喜八郎」の仕事


ところどころに昨日降った雪が残っている中、竹藪の竹に「清水喜八郎」と書いてある木札を針金で結んでいる。向こうではテンガロンハットをかぶったヤクザのひとりが、ジャージ姿のちょっと鈍くさい子分のチンピラに向かって何かを怒鳴っていた。


3日前のことだった。


「土地はよ、向こうのモンになっちまった。だけどよ、そこに植わっている竹はまだ、うちの組のもんだ?そうだろ?だから、竹を避けることができねえようにしちまえばいい。竹、一本一本に「清水喜八郎」っていう木札をぶら下げんだよ。そしたら竹に触ることは出来ねえ。だからよ、タダノ、お前に頼みてえのは、大学の友達何人かを集めて来て欲しいんだ。できるだけ多くの竹に「清水喜八郎」の木札をつけてえからな。」


そんなわけで「清水喜八郎」と書かれた木札を竹藪の竹に針金で結わえていた。大学から連れてきたスズキが(他の友人には何のかんので断られた。賢明な判断だ)、小さな声で「さみぃな~、さみぃな~」と繰り返しつぶやきながら、溶け始めた雪をシャクシャクと踏みしだいて竹藪の奥の方に入っていった。


帰りにファミレスでステーキを昼飯代わりにごちそうになり、封筒に入った1万円札を渡された。竹藪の土地がはたして、「清水喜八郎」の物のままであったかは知らない。

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Symptom 2061126(№53)(お萩)  

再々掲Symptom53番



君は今頃誰かを愛し、そうして生きているのだろう。
 
僕も誰かのことを愛したり、そうやって生きてきた。
 
でも、想うのは君のことばかりだ。
 

君がいなくて、とてもさみしい。
 



だんだん君と過ごした日々が遠ざかっていく。
 
そしてだんだん君と過ごした日々を思い出せなくなっていく。
 
君のことを考えたことや、君と話したこと、君とやったこととか、
 
なんかそういうのが全て
 
まぼろしであったかのような気持ちにさえなる。
 
 
君がいなくて、とてもさみしい。

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一昨年の春  

チューリップとスイセン2017年

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「盲目の時計職人 9」更新のお知らせ(再々)  

萩氏素材138


奥/「街」本館の萩氏ギャラリー更新のお知らせ(再々)です。

盲目の時計職人 9

使用機材はCONTAX T3でござる。
エモくてステキな廃墟や廃バスの写真がいっぱいなので見るが吉です。

category: お知らせ

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